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『愛があるねぇ!』って…

2018.04.05

「この照明、愛があるねぇ!」レストランでメニュー撮影をするカメラマン。
「このカット、愛があるねぇ!」プレビューをしているプロデューサー。
「この弁当、愛があるねぇ!」ロケ弁当を食べようとしたタレントさん。

などなど、割と年配の業界人が使うフレーズ「愛があるねぇ!」。
このフレーズを発する人の表情がほとんど「半笑い」である事から、
ポジティブな意味合いを持つと思われる。
私自身、実際に発することはあまりないが、
最近心の中で「愛があるねぇ!」と呟いた事が何度かあった。

テレビ大阪の番組「かがく de ムチャミタス!」のMCを務める石田靖さんと
たこやきレインボーが、「YATAIフェス!2015」というイベントのステージに
出演した時の事。
ステージ上で待つたこやきレインボーが2kmのマラソンを終えた石田さんを
迎えるという演出があり、一年生ADに
「FINISH」の文字が入ったゴールテープを作るように頼んだ。
(注:この番組は基本的に小道具類はすべて制作スタッフの手作りです)

幅広の包帯にフェルトで「FINISH」の文字を付ける事になり、
買い出しに行ったADさん。
青・緑・黄・ピンク・紫、そして赤というカラフルなフェルトを購入して帰って来た。
「FINISHは黒じゃないの?」との問いに「一文字ずつ色を変えます」との事。
「青・緑・黄・ピンク・紫」はたこやきレインボーのメンバーカラー、
そして赤は番組での石田さんのイメージカラー。

出演者6人をイメージしたカラフルな「FINISH」の文字。
屋外の広いイベントスペースで、何人の方が気付いてくれたか分からないけど、
心の中で「愛があるねぇ!」と呟いた。

同じイベントでFDを頼んでいた若手ディレクターに
「編集直前で時間がないと思うのでプロンプは作って渡すから…」と言うと、
「書かないと流れが頭に入りませんから自分で作ります」との事。
会社を出ようとした時に「こんな感じでいいですか?」と出されたプロンプは、
正直少し文字が小さかった。しかし、もう夜も遅いので
「屋外で距離があるからチョット見にくいかも…。でも雰囲気で分かるか…」と、
微妙な返事をして、迎えた本番当日。
出演者が立つステージ横から見たプロンプは文字が大きくなり、
さらに用紙もテープで貼り合わせて2倍の大きさになり、
長いコメントもひと目で分かるようになっていた。

イベントの進行を見守りながら、心の中で「愛があるねぇ!」と呟いた。

番外編。

小雨が降る夕方。
新地本通り(高級クラブが建ち並ぶ飲食街)を
打合せ場所に向かって濡れながら足早に歩いていた時の事。
まだ私服だが出勤前と思われるきれいなお姉さんも、
道の反対側を足早に歩いている。
「傘をさしているのに、どうして早足なのかなぁ…」
などと思いながら歩いていると、とあるビルの前で声をかけられた。

「私はもういらないので、これ持って行って下さい」とお姉さん。

「いえ、お返しする事が出来ないと思うので結構です」と私。

「使い古しのビニール傘なんで、捨ててもらっていいですから」と
 傘を手渡してビルに颯爽と消えていくお姉さん。

後ろ姿を眺めながら、心の中で「カッコいい!」と呟いた。 アレ?
 (※「愛があるねぇ!」じゃないので番外編…)

「フルハイビジョンだ! 4Kだ!」と、いかに技術が進もうが、
実際に考えて番組を作るのも演じるのも、そして観るのも人。

人には心があり、愛がある。

だから、一つでも多くの「愛があるねぇ!」の呟きをもらえるように、
明日もがんばろう。

jworks